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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(あ)3048号 決定 1967年9月19日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人藤田八郎、同鵜沢晋、同戸田善一郎の上告趣意について。

所論のうち、判例違反を主張する点は、所論引用の高等裁判所判例は本件と事案を異にして適切でないから、所論はその前提を欠き、その他の論旨は、違憲をいう点もあるが、結局は単なる法令違反を主張するものと認められるから、いずれも適法な上告理由にあたらない。(なお、本件起訴状の第一葉と第二葉との間には、検察官の契印があり、第一葉に続けて第二葉をつづっている点からいって、これを一体の文書とする趣旨であることを推認することができること、および第二葉の右肩に「別紙」と記載されているが、この「別紙」という表示のあることも、それが独立の文書でないことを暗黙に示すものであること等を総合してみて、右の二葉の紙は、合して一個の文書を成しているものと認めるのが相当である。もっとも、その第一葉には、いわゆるつなぎ文言がなく、また、第二葉に記載された犯罪事実に「公訴事実」の表題を欠いているのは、特に記載の明確性を重んずべき起訴状として決して適当なものとはいいがたく、このような不適当な方式をとることは好ましくないことではあるが、本件別紙の記載が本件公訴事実として記載されたものであることは文書全体を通して容易に了解することができるのであって、これをもって起訴状としての適法要件を欠くものとまではいうことができない。したがって、これと同趣旨に出た原判断は正当として支持すべきである。)

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄)

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